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 一般的にLEDの仕組みを思い浮かべるには、構造の簡単なホモ接合を考えるのが分かりやすいが、このホモ接合では、あまり高輝度なLEDは期待できない。

 輝度を上げるためには、境界に電子や正孔などのキャリアが集中して効率よく再結合が起こるような構造にする必要がある。ここでは、キャリアを境界付近にじょうずに集中させる接合、「
ダブルへテロ接合」と「量子井戸接合」について取り上げることにする。


ダブルへテロ接合

 ホモ接合がパンの上にパンをのせただけの二層構造なら、ダブルへテロ接合はハムを二つのパンで挟んだサンドイッチ構造だと言えそうだ。ホモというのが同種という意味で、ヘテロというのは異種という意味を考えれば、なんとなくイメージがわいてくる。



典型的なダブルへテロ構造。図で分かるように、活性層が二つのクラッド層に挟まれたサンドイッチ構造をしている。


 ダブルへテロ接合では、ハムを挟む二つのパンを「
クラッド層」といい、それぞれp型とn型の半導体が使われている。一方で、二つのパンに挟まれているハムは「活性層」といい、ここに電子や正孔などのキャリアが集中し、再結合が起こる。活性層は、p型とn型のいずれでもよい。ただし、活性層のバンドギャップ(伝導帯と価電子帯の間隔)はクラッド層のものより小さくなっているものを使う。

ダブルへテロ接合での電子の振る舞い


 まず、これらの三層構造が接合されると、左図のように電子と正孔がそれぞれn型のクラッド層、p型のクラッド層に移動する。

 次に順バイアス方向に電圧をかけると、電位障壁が変化して、電子と正孔が再び移動し始める。ここはホモ接合の場合とは異なり、右図のように、p型のクラッド層と活性層の間には電子に対する電位障壁ができ、電子は活性層のところまでで閉じ込められる。一方、n型のクラッド層と活性層の間には正孔に対する電位障壁ができ、正孔は活性層のところまでで閉じ込められる。

 つまり、活性層には伝導帯と価電子体のそれぞれに電子と正孔の密度が高くなるという閉じこめ効果が生じる。このような状態では、電子と正孔の再結合が効率よく行われるのでホモ接合構造に比べてダブルへテロ構造は発光効率が良い。



量子井戸接合

 ダブルへテロ接合が二枚のパンで挟んだサンドイッチ構造なら、量子井戸接合はたくさんの具をはさんだデラックスサンドイッチ構造といったところだろうか。まあ、それはさておき、量子井戸接合を理解するには、名前にあるように、厄介な「量子」の世界の性質を理解する必要がある。

 まず、こんな深遠な質問を投げかけてみる。ある半導体を次々と半分の大きさに切り続けていったときに、それはいつまでも元の半導体でありつづけるだろうか?もっと言うなら、その半導体を電子の波長の大きさくらいの薄さにまで切り刻んだときに、半導体の中の電子はこれまでと同じように振る舞い、移動するだろうか?

 「LEDを理解するための前知識」で「半導体の中の電子はどう振る舞い、どう移動するか」ということを説明したが、実は半導体の大きさが電子の波長(10nm程度)ほどにまで小さくなると、それは必ずしも正しくない。量子の世界での厄介な現象が現れてくるからだ。

 第一に、「
トンネル効果」によって、電子は半導体層の間にあるエネルギー的な壁を、確率的に「すり抜け」てしまう。

 第二に、エネルギーが「
離散的」になり、バンド構造を形成しなくなる。これまでは、LEDチップは小さいながらも、原子の数はアボガドロ数個(10の23乗)よりもはるかに大きい数だった。そのため、それぞれのエネルギーレベルはお互いに重なり合ってバンドのような構造をとっていたが、電子の波長程度の薄さになると、そういったバンド構造はとれない。

 詳しいことは「量子ドット」で触れることにして、結果として、量子井戸接合で電子がどのように振舞うのかを見ておこう。

 このような超薄の半導体層を何枚も重ねたものを「
超格子」というが、クラッド層でサンドイッチしてやると、接合領域に決まった値のエネルギーをもつ電子と正孔だけを集めることができる。そのためホモ接合やダブルへテロ構造よりも波長幅の狭く(したがって、より単色に近い)、またエネルギー効率のよいLEDが可能になる。順バイアス方向に電圧をかけたときの電子と正孔の再結合の様子を下図に示しておく。

量子井戸接合での電子の振る舞い。順バイアスをかけたときの結果だけを示した。



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