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プラズマディスプレイビジネス最前線
/ 工業調査会


よくわかるプラズマテレビPDP―プラズマテレビが主役になる/ 電波新聞社


プラズマエレクトロニクス インターユニバーシティ/ オーム社



 

  
イントロダクション
プラズマとは?
   「物質の第四の物理状態」
   自然界に現れるプラズマ
   人工的につくれるプラズマ
   プラズマは光る

PDPの仕組み
   CRT、LCDとの比較
    CRTとの相違点/LCDとの共通点
   PDPの構成・原理
進化するPDP
    放電セルの改良
   まとめ:PDPの利点・欠点

 
プラズマディスプレイ、PDP
 - プラズマとは?


 「プラズマ」と聞いて、いろいろなものを連想してしまう人は少なく。しかし、もともとの意味は、図のように、「プラスの粒子とマイナスの粒子(電子)がほぼ同等の数だけ入り乱れて自由に振舞っている状態」というだけに過ぎない。

「物質の第四の物理状態」

 「(マイナス)イオン」などと同じように、「プラズマ
」という言葉は最近頻繁に使われている。例えば空気清浄器などでは、この「イオン」と「プラズマ」という言葉が宣伝文句になっているが、漠然と使われているので、いまいち何なのかはっきり分からないという人も多いだろう。プラズマディスプレイの「プラズマ」もこれと同じものだが、一度ここではっきりさせておこう。


 必ずしも認められた表現ではないが、プラズマを「物質の第四の物理状態」と考えると、後々の説明が飲み込みやすいかもしれない。固体・液体・気体が三つの物理状態だということは誰でも知っているが、プラズマはその次にくる物理状態ということになる。

 水分子(H2O)の場合で考えてみよう。低温の場合、水分子は水素結合によってお互いに結びつき、しっかりとした格子をつくっている(氷)。温度が上がれば、水分子の運動は活発になり水素結合はたやすくちぎれ、水分子はお互いに動きやすくなる(水)。さらに温度が上がれば、水素分子はお互いに意識することなく、自由気ままに振舞う(水蒸気)。

 ところが、さらに温度を上げていくとどうなるだろうか?100℃や200℃といった程度ではなく、一万℃以上まで加熱すると、水分子はもはや分子ではいられなり、酸素原子と水素原子に分かれてしまう。それだけでは終わらずに、原子さえも原子のままではいられず、電子と原子核(プラスイオン)へと電離してしまう。こうして、電子と原子核は自由に運動する。こうしてそれまでにない性質を示すようになる。

 このようにプラスの粒子(この場合は原子核)とマイナスの粒子(電子)がほぼ同等の数だけ自由に入り乱れて振舞っている状態を「
プラズマ(plasma)」と呼んでいる。またプラズマには電流が流れ、この現象を「放電」と呼んでいる。



自然界に現れるプラズマ

 身近な例として、雷を挙げることができる。これは空気との摩擦によって帯電し、高電圧の状態になった雷雲どうしの放電によって生じる高濃度のプラズマである。太陽の内部も高濃度のプラズマそのものである。はるか上空の電離層の低濃度のプラズマが地球の磁場に拘束されて北極などに集まると、オーロラとなる。


人工的につくれるプラズマ

 人工的にもプラズマをつくることはできる。もっとも身近な例の蛍光灯にはじまり、半導体産業での加工プロセス、人工ダイヤモンド生成などにもプラズマが利用されている。

 ところで先ほど、プラズマについて「高濃度」、「低濃度」と使い分けたが、少しこのことに注意する必要がある。もちろん本質的な違いがあるわけではないが、結果として現れてくる性質が異なってくるので分けて考えておくと都合がよい。

 太陽や雷は確かに高温だが、もし濃度が低ければ、プラズマは必ずしも高温である必要はない。温度というのは、そもそもどれだけ激しく粒子が運動しているかということなのだが、一つ一つの粒子の運動が激しくても、高エネルギーの粒子濃度が低ければ、全体としては手で触れるほど温度が低いこともある。まさか蛍光灯が一万℃もあるはずがない。

 この観点からプラズマを区別するなら、「低温プラズマ」と「高温プラズマ」となる。なんとなくプラズマという言葉に、底知れぬエネルギーを感じる人がいたら、高温プラズマの先入観が強いのだろう。(昔のマンガにはプラズマを武器としたものが多かったことだし…。)

 放電の観点から考えれば、低温低圧のプラズマ放電を「グロー放電」といい、高温では「アーク放電」という。蛍光灯などはグロー放電、半導体加工などに使われる熱プラズマはアーク放電である。半導体製品の生産に利用されるアーク放電については、「ICチップができるまで/成膜工程」を参照。



プラズマは光る?

 プラズマは小さな電子やイオンの集まりであるため、直接見ることはできないが、プラズマを光らしてやればその存在を知ることができる。

 まずは、発光の原理について簡単に述べておこう。電子や原子などの粒子がとりうるエネルギー準位は、はしごのように飛び飛びにしか許されていない。エネルギーが最も低い位置の場合、それを「基底準位」という。粒子は普段基底準位にあるが、何らかのはずみで上のエネルギー準位にあがることがある。この現象を励起といい、この高いエネルギー順位を「励起準位」という。励起状態にあった粒子が再度基底順位に降りてくる場合、その差分のエネルギーを光として放出する。

 (低温)プラズマでは、多くの分子は基底状態にあるが、電離した高エネルギーの電子がいくつか存在している。この高速電子が中性の原子や分子に衝突してその粒子を励起する。これらの粒子が励起状態から基底状態に戻るときに発光する。これによってプラズマの存在を知ることができる。

 プラズマディスプレイはこの原理を利用して、小さなプラズマ発光装置をたくさんつくり、それをつなげて情報信号で制御することでディスプレイにしたものである。




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