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「暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで」
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量子論の宿題は解けるか
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The Physics of Quantum Information: Quantum Cryptography, Quantum Teleportation, Quantum Computation
/Springer Verlag
最終更新日 2002/08/29
イントロダクション
量子テレポーテーションに関する歴史
より安全な暗号を目指して
量子テレポーテーションの基礎
量子テレポーテーションの流れ(理論編)
量子テレポーテーションの流れ(実験編)
今後の展望&リンク集
■量子テレポーテーション、量子暗号
−量子テレポーテーションの流れ(理論編)
暗号業界では、情報の送信者のことをアリス、そして受信者のことをボブと呼ぶのが慣例となっている。ここでは、量子テレポーテーションを用いてアリスがボブに情報を送信する手順について見てみよう。
量子テレポーテーションの主な流れ(モデル)
いくつか注意しておきたいことは、量子テレポーテーションを用いても「超光速」の情報通信を行うことはできないということだ。確かにEPRペアを用いた量子的な通信手段では瞬時に伝わるが、量子テレポーテーションを完了させるには、電話などの古典的な通信手段を併用する必要があるためだ。
アリスが粒子Aと粒子Bのベル測定を行えば、粒子Aの情報Ψ(光子なら偏光、電子ならスピンなど)は瞬時にしてボブの粒子Bにうつされる。ただし、アリスがベル測定で得た結果をボブが知っていないことには(つまりアリスとボブでベル状態を共有していないことには)、ボブは量子テレポーテーションで受け取った情報Ψをアリスの送信したかった情報に変換することはできない。したがって、ベル測定を終えたあと、アリスは古典的な通信手段を用いてその結果をボブに知らせてやる必要があるというのだ。
では、こんなことで量子テレポーテーションの安全性は守れるのだろうか?とくに古典的な通信手段がネックになるように思われるが…。そこで、イヴが次のような計画でアリスとボブの通信を盗聴しようとした場合を考えてみよう(暗号業界では盗聴者のことをイヴというのが慣例)。
計画A.量子通信で無理やり割り込んで情報Ψを盗聴する
計画B.古典的な通信手段でやり取りされたベル測定の結果を盗聴する
まず、計画Aの場合はどうだろうか?イヴが量子通信を盗聴することは技術的にも簡単なことではない。しかし、仮にうまくやって量子通信の情報を盗み出せたとしても、それだけではイブのもくろみが達成されたとはいえない。先ほども述べたように、情報Ψだけでは意味のある情報を得ることができないからだ。ベル測定の結果も合わせて盗み出さなければならないからだ。
では計画Bは?電話など古典的な通信手段を盗聴することなどたやすいはずだ。こうしてイブはベル測定の結果を得ることができる。しかしこの場合も、ベル測定の結果だけを盗んだのでは意味がない。変換すべき情報Ψがなければ、やはり意味のある情報を盗めたとはいえないからだ。
そこで、イヴは情報Ψとベル測定の結果の両方を盗聴しようと考えたとする。つまり計画Aと計画Bを同時に実行しようというわけだ。しかしそれは無理な話だ。なぜなら、計画Aを実行するときイヴが量子的な絡み合いを壊してしまうために、アリスやボブに自分の存在を知られてしまうからだ。イヴが何の痕跡もなく盗聴することが不可能というのは、技術的に不可能というのではなく、理論的に不可能なのだ。もし盗聴者の存在を知れば、アリスとボブはベル測定の結果のやりとりを止めるだろう。したがって、イヴは計画Bを遂行できなくなってしまうからだ。
こうして量子テレポーテーションを利用すれば、絶対に盗聴されずに情報を送ることができるというわけだ。この方法を用いて、アリスがボブに秘密鍵を送れば、安全な量子暗号が実現する。
量子テレポーテーションの基礎
量子テレポーテーションの流れ(実験編)