英会話教室へ行く必要はありますか?
この記事では、
という内容を取り扱っています。 子供たちがうらやましい…何で子供はあんなに言葉を覚えるのが早いんだろう?子供に英語の勉強をさせるために、お母さんもいっしょにやるからと言ったものの、子供ばかり英語が上達して自分はちっとも上達しない、そんな経験がある人は誰しもこう感じてしまうことでしょう。子供の英語が上達することはうれしいのですが、なぜ子供だけで、私は…なんて思っちゃいますよね。 そこで、私たちは子供たちの学び方を真似てみようとこころみるんです。たとえば、子供のようにとにかく理屈ぬきで量を聞くというものでしょうね。××ヒアリングマラソンなどといったものが雑誌で綴じ込みはがきとして宣伝したりしてあります。留学というのも同じような考えでしょう。でも…ほんとに効果があるんでしょうか?そもそも、子供たちの学び方をまねるといっても、どこをまねるのかといった疑問もあります。 ところで、子供というのは、私たち大人より何か優れた能力を持っているのでしょうか?私たちにないような特殊な能力のおかげで、子供たちはなんなく第二外国語を覚えてしまうのでしょうか。 子供たちは未熟だから理解が早いの?自分が生んだはずの子供なのになんでこんなに物覚えがいいんだろうとおもっていたお父さん、お母さん、喜んでください。何も、私たち大人が子供たちより劣っているというわけではないのです。 では、大人より優れているわけでない子供たちが、なぜ大人より早く言語を習得するのかということに対する答えが気になりますが、これがややこしい話なんです。 子供たちの言語習得が早いのは、子供の脳の処理能力が未熟なためなのです。そのため、子供たちは聞いた文を丸ごと理解することができずに、文を小さな単位に分割しないということにあるのです。 しかし、これでは質問の答えになっていないような気がしますよね。この答えがわかるために、ちょっと回り道になりますが、今回はとてもユニークな実験を見てみることにしましょう。 ベトラツ星のベトラツ人とベトラツ語今回の実験は実にユニークです。この実験はフロリダのアトランティック大学の心理学者アラン・カーステンらによって行われました。ボランティアの大学生を集めて、あるアニメーションを見てもらい、その映像を描写する言葉を聞いてもらい、その言葉を理解するというものです。 さて、そのアニメーションですが、それはベトラツと呼ばれる惑星の原住民の様子や動作についてのものです。また、それを描写する言葉ですが、ベトラツ語とよばれ、6つの単語しか存在しません。また、文法も単純なもので、様子、行動、動きの方向を示す単語がそれぞれ二つずつあるだけです。 もちろん、そんな惑星も言葉もどこにも存在しません。両方とも人工的に作られたもので、誰にとっても触れたことのない初めての外国語ということになります。(惑星ベトラツのなんとも奇妙な原住民の行動がみたい方はこのURLを参考にしてください。 http://www.nature.com/nsu/010308/movie2.gif これを描写する言葉が’geseju elnugop doochatig’というものです。) では、もう少し詳しく実験を見ていきましょうか。集めた被実験者は二つのグループに分けられました。二つのグループともベトラツ人の同じアニメーションを見せられます。それと同時にその映像を説明する文をベトラツ語で聞くのですが、説明の文が二つのグループで異なりました。 まずは一つ目のグループです。その映像を説明するのに、ベトラツ語の三つの要素すべてを使った文が用いられました。つまり、一度の説明に三つの単語を聞いたのです。このことを三回繰り返しました。 次に、二つ目のグループです。今度は映像を説明するのに、先ほどのように一度に三つの要素を用いた文を聞くのではなくて、一つの要素だけが用いられました。つまり同じアニメーションを見ていても、その様子、行動、動きの方向の三つの要素のうちからひとつだけの単語を使って、アニメーションが説明されているわけです。一度の説明にひとつの単語しか聞きません。これを同じく三回繰り返します。 最後に、両方のグループがベトラツ語を理解したかどうかを確かめるために、両方に今までとは違うアニメーションを見せ、それぞれのグループの理解の具合を比べました。 さて、その結果ですが、どちらのグループがよく理解したと思いますか?念のため言っておきますが、一つ目のグループは三つの単語の文を三回聞いているのに対し、二つ目のグループはひとつの単語の文を三回しか聞いていません。つまり、単語を聞いた回数では一つ目のグループのほうが多いわけです。 なんと、この実験の結果からわかったことは、実は二つ目のグループのほうが一つ目のグループよりベトラツ語をよく理解していたということなのです。 (なかなか言葉ではこの実験を説明するのは難しいですが、うれしなことに、この実験のデモンストレーションが下のURLからダウンロードできます。この実験結果に納得できる人もできない人も、奇妙なべトラツ人のアニメーションと変なベトラツ語の実験をぜひお試しください。) 子供たちは未熟だから理解が早いんだ!さて、話は最初の子供の言語習得能力に戻ります。先ほどのベトラツ星の実験から引き出せた結論は、言語の理解という点では、短く単語に区切って聞いたほうが理解しやすいというものでした。 子供は脳の処理能力が未熟だと言いましたが、そのため子供たちは長い文を聞いても、その文の中の区切り一つ一つに分けてしか聞き取ることができないのです。これをベトラツ星の実験に置き換えると、一つ目のグループのように完全な文を聞いても文全体をそのまま聞き取ることができずに、二つ目のグループのように単語一つ一つに分けてしか聞き取ることができないということなのです。 二つ目のグループの方が理解が早かったことは先ほど述べたとおりで、子供も二つ目のグループのように聞いているので、英語などの外国語をどんどん聞いても理解が早いわけです。 ここがややこしいところなのですが、子供たちは脳の処理能力の未熟さのおかげで言語の理解が大人より早いと先ほど述べたのは、こういうわけなのです。 ただし、子供たちのその能力に任せて、子供たちをほったらかしておいていいというものではありません。子供たちは、自分たちが理解するという点では非常に早いのですが、時々文法的に変な言葉をしゃべりますよね。あれは子供たちが単語を主体に覚えていく(覚えざるを得ない)ため、文法がいいかげんだということによって説明されています。この実験をしたグループでも、言葉を理解するという点では文をコマ切りにして聞いた方がより効果的だが、文法的な理解の点ではやはり全文を聞いた方が理解しやすいということを述べています。 言語理解の上では15歳の子供は大人ですまた、言語習得能力に差が出る大人と子供との境界線についてですが、こんな例が多く報告されています。英語を母国語としない、アメリカへの移民の例ですが、13歳の弟はすぐに英語を理解してしまったのに対し、15歳の兄は今でも英語が理解できずに家にこもりがちだという話です。この例だけで結論付けるわけにはいきませんが、科学者の間でもやはり12歳から15歳の間くらいにこの境界線があると考えられています。 ところで日本の場合、英会話教室は子供教室はたいてい12歳までですが、おそらくこの理由は小学生までということなのでしょう。しかし、今回話したようなことを考えると、この英会話の子供教室が12歳くらいまでだというのは理にかなっていると言えるかもしれませんね。今の中学校の英語の授業がどうなっているかちょっとわかりませんが、いわゆる昔ながらの単語をひとつずつ覚えていく勉強法も、言語の理解の上では非常に効果的だといえるかもしれません。 まだ生徒たちが英語に対して真っ白だからといって、赤ん坊と同じように、耳からじゃんじゃん聞かすという勉強法はちょっと乱暴だと言えるかもしれません。少なくとも、先ほど述べたような言語上の大人と子供の壁はこのあたりの年齢にあるわけですから。 英会話教室に行こう?さて、いよいよ問題の私たち大人の話になるわけですが、迷っていた英会話教室はどうしましょうか?今回引き出した結論からだと、子供が英語を聞いて理解するように、私たちも英会話教室でとにかく聞いてみるというだけで急に英語が理解できるようになるというのは難しそうです。 しかし、英会話では話すという点もありますので、今回の聞くという受身的な言語処理能力では説明できないこともあります。したがって、場合によって英会話教室ということになるのでしょう。 つまり、単に英語を聞くだけで理解できるようになりたいというのなら、英会話教室は大人の皆さんには難しそうです。しかし、英語が話すようになりたいなら、英会話教室も効果があるかもしれません。これは別の機会があればということで…。 単にに英語が聞いて理解できるようになりたいというだけなら、家で中学校の自分の子供の中学校の教科書でも眺めている方がいいのかもしれませんね。 関連サイト
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