■有機ELの科学;ホタルの発光から量子効率まで
- りん光発光材料を用いた量子効率100%の有機ELディスプレイ
励起三重項状態をどう活用するか
有機ELの発光原理は前のページでも説明したように、
1.電極から注入された電子と正孔が再結合して有機分子を励起し、
2.励起された有機分子が基底状態に戻るときに光を放射する
というものだった。ここでは、励起過程という視点からステップ2をもう少し詳しく見てみることにしよう。
再結合によって励起された分子には、一重項励起状態と三重項励起状態が1:3くらいの割合で生じることが知られている(Langevinモデル)。ところが、一般の蛍光発光材料は、T1からS0に戻るときにエネルギーをりん光としてではなく熱的に失ってしまうため、励起された分子の約75%が発光しないことになってしまう。そのため、以前は有機ELディスプレイの(内部)量子効率の上限は約25%であるとされていた。

図1.蛍光発光が中心の有機ELディスプレイの(内部)量子効率 |
しかし、ある種のりん光発光材料をドープした有機ELディスプレイでは、無駄に捨てられていた三重項励起状態のエネルギーをりん光として放出できるため、有機ELディスプレイの(内部)量子効率の上限を100%にまで引き上げることが可能である。このりん光発光材料には、スピン軌道カップリングの影響の大きな分子が使用されている。例えば、図2に示すIr(ppy)3(fac tris(2-phenypyridine) irdium)やPtOEP(2,3,7,8,12,13,17,18-octaethyl-21H,23H-porphyrin
platinum(II))などがある。

図2.左:Ir(ppy)3、右:PtOEP |
一般にりん光は波長が長いものが多く、青色のような短波長の光を放出することは難しい。しかし、米国のベンチャー企業Universal Display Corporationなどがポルフィリン金属錯体分子などを用いて、青色りん光発光材料の作成に成功している。
High Efficiency Materials - UDC(英語)
また、りん光発光材料(ゲスト分子)をドープした層では、ホスト分子からゲスト分子へ励起エネルギーが上手に受け渡しされなければならない。この受け渡しについては、図3に示すような二つのモデルが提案されている。

図3.ホスト-ゲストでのエネルギー移動 |
これまではりん光を利用した有機ELディスプレイは低分子系に限られていたが、高分子系のものでも研究開発が進められ、少しずつ成功例が登場し始めている。
技研だより:りん光性高分子EL材料の開発 - NHK放送技術研究所
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