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オーロラ騒ぎと最近の太陽の事情 |
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---四月をむかえた始めの週に、アメリカの南西岸の人々は、いつもと違った異様な夜をむかえていました。それもそのはず、夜空に今まででいちばん美しいと言われるほどのオーロラが見られたのです。ところが、この珍しい現象は、もっとスケールの大きな出来事の一部分にしか過ぎなかったのです。 --- |
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この記事では カルフォルニアの空にオーロラが? オーロラの仕組み 太陽の極大期 宇宙の大きな流れ という内容で構成しています。 |
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カルフォルニアの空にオーロラが? 四月をむかえた始めの週に、アメリカの南西岸の人々は、いつもと違った異様な夜をむかえていました。その興奮がさめやらず、寝不足になってしまった人も多かったことでしょう。それもそのはず、夜空に今まででいちばん美しいと言われるほどのオーロラが見られたのです。 もっとも、はじめのうちは、そこに住んでいる人たちはこれがオーロラと分からずに、いろいろと混乱があったようです。例えば、このオーロラはロサンゼルスでも見ることができたのですが、ロサンゼルスにあるラジオ局に、この情報を寄せる電話が殺到し、ラジオ局の関係者は対処に追われたそうです。なかには、UFOだと思った人もいたそうです。 (そのオーロラの写真をまとめたページ。すばらしい... http://www.spaceweather.com/aurora/gallery_31mar01.html) また、大騒ぎになったこのオーロラは、カルフォルニアやニューメキシコほどはっきりとしたものではないにしても、北海道でも観測することができたそうです。 こうやって、オーロラ騒ぎで盛り上がったのも無理もないですよね。私たちの中にも、どれだけの人が本物のオーロラを見たことがあるかわかりませんが、少なからず、オーロラといえば北極や南極などの高緯度で見れるものだといったイメージがあるのではないでしょうか。Tシャツ姿でオーロラを見ている自分を想像するのは結構難しいのではありませんか(笑)。 ところが私たちの目に見えるこの珍しい現象は、もっとスケールの大きな出来事の一部分にしか過ぎなかったのです。珍しいオーロラの背後では何が起こっていたのでしょうか。 オーロラの仕組み まずは、オーロラができる仕組みについて、少し触れておきましょう。簡単にいってしまうと、宇宙から飛んできた電子や陽子などの粒子が、地球の大気中に存在する酸素や窒素の分子に衝突すると発光するといった仕組みになっています。この電子や陽子などの粒子は、おもに太陽から発せられたものです。 それでは、なぜオーロラは普段日本などでは見ることができず、南極や北極の付近でしか見れないのでしょうか? 地球は大きな磁石だといわれるように、自分自身が磁場を持っています。この磁力線は極から出入りして、地球を覆っています。また、電子や陽子はこの磁力線に沿ってしか進むことができません。低緯度のところに直接粒子が飛び込むことはできず、流されてしまいまうのです。 このとき、流された粒子の一部は、主に太陽から見て地球の裏側にある磁気圏というところに蓄えられます。ちょうど彗星の尾のような感じです。そして何かのはずみで、ここに蓄えられていた粒子が、磁力線に沿って地球の高緯度の地域に再び飛び込んでいきます。 (この図を参考にすると分かりやすいです。 http://member.nifty.ne.jp/akaoka/faq/aurora991123/aurora.gif ) このように太陽風にのって飛んできた粒子が直接衝突してオーロラとなるのではなく、いったんこのように磁気圏に蓄えられたものがオーロラの発生と関係していると考えられています。 そのため、極の中心でオーロラが起こるわけではなく、極の位置よりも少しはなれた地域に輪のようになってオーロラが生じるのです。この輪をオーロラオーバルといいます。 そういうわけで、日本のような比較的低緯度ではオーロラが現れることは希で、見ることができるのは極付近となってしまうわけなのです。 太陽の極大期 しかし、今回のように中緯度でもオーロラが見られたのは、最近の太陽の活動が非常に活発だったからなのです。 太陽にはおよそ11年周期の活動期があり、ちょうど昨年から今年にかけて、その極大期に入っているのです。この極大期では、太陽の表面に黒点などができ、頻繁に爆発現象が起こるようになります。 例えば、今回の極大期の大きな特徴であった黒点のNoaa 9393は、地球の13倍ほどの大きさになりました。 このような巨大な太陽黒点は、コロナ質量噴出(CME; coronal mass ejection)と呼ばれる太陽表面の強烈な爆発現象を伴います。このため、大量の荷電粒子が宇宙空間に放出されるのです。そして、この大きなエネルギーをもった荷電粒子の流れは、二日ほどで地球に到着し、これが地球の磁場に衝突すると、大きな磁気嵐を引き起こすのです。 このようにして、太陽の活発な活動のおかげで、粒子が通常よりも低い緯度の地域に降り注ぎ、普段では見れないような中緯度でもハッキリとしたオーロラが見れたのです。(いつもより大きなオーロラオーバル。赤がオーロラをはっきり見れた地域。http://news.bbc.co.uk/olmedia/1255000/images/_1256112_pose300.jpg) このようなオーロラ自体は無害で、人の目を楽しませてくれるものだといえますが、引き起こされた磁気嵐には別の影響もあります。それは、通信障害や、人工衛星の運航、航空機の交信の障害などの悪影響です。もし地球に磁場がなければオーロラがどこでも見れるのになんていったのんきなことはいっていられないわけです。 なお、太陽が極大期に近づいたことを示すのは、このような目で確認できるものだけではありません。それは2月の中旬に起こった太陽の磁場の反転です。磁場の反転というのは、太陽の北極が南極になり、南極が北極になるということです。言葉だけ聞くとなにやら仰々しいですが、太陽の11年の周期の中で必ず起こることで、予期していなかったものではありません。このようにして、この現象が起これば、間違いなく太陽が極大期に近づいているのだということが分かるのです。 こうして極大期に近づいた太陽は、普段より表面に多くの黒点が現れるようになり、頻繁にフレアが発生するようになります。なお、このフレアの規模の大きさを表すのに、人類の今まで使ってきたエネルギーより大きいとか、TNT一億トン分だとか言われることがありますが、それでも十分に表現できていないといえるでしょう。 特に今回の最大期は、平均より強いものだったため、普段では見ることのできない場所で美しい夜のショーが現れたというわけです。 宇宙の大きな流れ また、今回の太陽の磁場の反転が示していたのは、太陽が極大期に近づいたことだけではありませんでした。この時期とほぼ同時に、地球に降り注ぐ宇宙線の量が上下したということが観測されたのです。いったい、これはどういうことでしょう。 太陽系の天体は太陽の磁場によって覆われています。そのため、この磁場が宇宙線のような高エネルギーの粒子から地球などを守っていると考えられています。このことは50年程前から科学者のあいだでは知られていることでした。 だとすると、太陽の磁場と宇宙線の組み合わせと、地球の磁場と太陽のコロナ質量噴射の組み合わせとの間には、面白い関係があることが分かりますよね。まったく仕組みが同じというわけではありませんが、私たちの地球の磁場が太陽からの危険な爆発現象の影響から地球をまもっているのと同じように、太陽の磁場も宇宙線のような危険から地球を守っているというわけです。 このようにして、今回のような太陽の磁場の反転が、地球に降り注ぐ宇宙線の量に関係していたわけです。 ちなみに、宇宙線は、地球の天気を左右する上層の大気に大きな影響を与えると考えられており、関心をあつめています。そして科学者は今回の変化を研究のチャンスとして注目していました。 太陽が地球の自然現象に深く関わっているのはいうまでもありませんが、こんなかかわりもあるのかと思うと驚かざるをえません。 私たちの目に見える形であらわれたオーロラは、実はこのような変化の末端の現象で、その背後には非常にスケールの大きい出来事が存在しています。私たちの目に見えるオーロラ一つをとっても、宇宙の大きな流れというものを感じますよね。 関連サイト 太陽活動活発化でオーロラ現象が盛んに - CNN日本語版 コラムには書きませんでしたが、「共食い現象」について書かれています。 太陽フレア: この25年間で最大規模の爆発現象観測 NASA - 毎日新聞 科学のつまみ食い オーロラは日本で見られるの? オーロラの仕組みについて分かりやすく書かれています。コラムで省略したことまで詳しく分かりやすく書かれています。発光の仕組みや、磁気圏に蓄えられる粒子のことなどについて。 初心者のための太陽系プラズマ科学 さらにもう少し科学的な根拠が欲しい人はこのページを参考にするといいでしょう。東京大学教養学部からのページ。発光の仕組みを原子の構造レベルから説明している。 - ここからは英語のサイト - SpaceWeather.com(英語) 今回取り上げた内容について、いちばん分かりやすく、詳しくかかれているのはこのページでしょう。英語ですが、今回のオーロラの写真を集めたページは見ておきたいです。ステキです。 オーロラ・ギャラリーのページ 4/12と3/30-4/1の2ページ http://www.spaceweather.com/aurora/gallery_12apr01.html http://www.spaceweather.com/aurora/gallery_31mar01.html James Van Allen: Space Odyssey(英語) 最後の太陽の磁場と宇宙線の関係についてのページ。このジェームズ・アレン氏はTimeなどの表紙を飾ったこともあり、この分野で有名な科学者です。 |
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