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超低温の世界は量子ワンダーランド


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 技術的な話としては、光学レーザーはレンズや鏡、ビームスプリッターなどを利用して光子をトラップしておくことができます。原子レーザーの場合も、先ほど話した磁場を使えば、光学レーザー同様に原子をトラップすることは可能です。

 ただ、これまで原子レーザーに欠けていたのは、光学レーザーのように、強くて方向性をもちコヒーレントな原子ビームの供給源でした。しかしBECは、このすべての性質を兼ね備えています。

 だからBECが実現できるようになれば、原子レーザーをつくりたい人なら誰だってこれを利用しようと思いつくわけです。ただ、発想こそ簡単ですが、技術的にはそう簡単なものではありませんでした。これも光学レーザーの仕組みと比較することではっきりします。

 先ほどもいったように、原子をトラップする部分には問題はないのですが、そこからコヒーレントな状態の原子を取り出す方法が必要になります。従来のレーザーの場合は、外部から原子に光を与えて、原子から一定の光子を取り出します。そのとき他の方向の光子は取り除かれるので、鏡の向かい合っている軸に垂直な光子だけが残り、鏡に反射されてコヒーレントな状態になります。そして光子をトラップしておいた二枚の鏡のうち片方が部分的に光を透過するため、そこから光子ビームを取り出すことができます。

 原子レーザーの場合は、蒸発冷却でやったように原子をBECの外へ弾き出してしまうと、その原子のエネルギーは変わってしまい、もはやBECとコヒーレントな状態にありません。そのため、コヒーレントな状態でBECのなかの原子を外に取り出すには、「トンネル効果」によって取り出すしかありません。現在さまざまな方法で、これが試みられているのですが、取り出した原子ビームの寿命やとどく距離などが短いという点が課題となっているのです。

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