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DNAメッセージ・イン・ア・ボトル |
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---まだ見ない知性を持った生命が拾ってくれることを期待しながら、自分のDNAと手紙、写真などを宇宙船に乗せて、太陽系を越えて、宇宙の果てへと飛ばす・・・。自分の書いた手紙をビンに詰めて海へ流すという発想とちょうど同じような夢のあるプロジェクトが、ヒューストンのあるベンチャー企業によって行われようとしています。--- |
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この記事では 自分の分身とともに手紙を宇宙に送る 一般の人の参加できる宇宙ミッション 宇宙でのビジネス という内容で構成しています。 |
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自分の分身とともに手紙を宇宙に送る まだ見ない知性を持った生命が拾ってくれることを期待しながら、自分のDNAと手紙、写真などを宇宙船に乗せて、太陽系を越えて、宇宙の果てへと飛ばす・・・。 自分の書いた手紙をビンに詰めて海へ流すという発想とちょうど同じような夢のあるプロジェクトが、ヒューストンのあるベンチャー企業によって行われようとしています。 もちろん、私たちが生きている間どころか、人類が生存している間に、それが他の生命によって発見されて拾われるかどうかなどといった保証はまったくありません。 しかし、ある意味最も民間企業らしい、エンターテイメントにあふれたこのプロジェクト、いったいどんなものなのでしょうか? 一般の人の参加できる宇宙ミッション このプロジェクトは、Encounter 2001というベンチャー企業が行っているもので、ソーラーセイルとよばれる帆船というか凧のような宇宙船を使っています。凧が風によって飛ぶように、このソーラーセイルは太陽などの恒星から放たれる光の粒を推進力としています。そのため今までのスペースシャトルなどと違い燃料を積む必要もなく、太陽系をでて、どこまでも飛んでいけるというわけです。もっとも、飛び始めは非常にゆっくりとしているため、お隣の火星に行く程度なら、このソーラーセイルは今までの宇宙船と比べてあまりメリットはありません。しかし、抵抗の少ない宇宙ではソーラーセイルは徐々に加速していくので、太陽系のはずれ冥王星の距離まで行くと、今までのどの宇宙船よりも早くたどり着くことが出来ます。(ソーラーセイルの詳しい説明は、以前書いた「帆船で宇宙を旅しよう」のコラムを参考にしてください。) また、このプロジェクトの売りは、世界中の誰もが参加できることにあるでしょう。しかもつい先日、宇宙に飛び出した民間人のデニス・チトー氏のように2000万ドルも用意する必要はなく、50ドル程度の参加費用があればよいのです。 このプロジェクトでは、最大で450万人の情報をデジタル化して打ち上げることが出来るそうですが、現在の時点で6万7千人の参加者が集まっています。なお、このあたりはいかにも民間企業の主催するプロジェクトらしいのですが、参加者は自分の情報を宇宙に飛ばすことが出来るだけではなくて、実際に宇宙でのプロジェクトの進行具合について、専用のソフトによってオンラインで中継映像を見ることが出来ます。 プロジェクト自体もユニークなのですが、それに集まってくる人も実にさまざまです。例えば、アメリカのある中学校の教師は、140人の生徒と一緒にこのプロジェクトに参加しています。宇宙の広大さを生徒たちに学んでほしいと言うのが希望だそうですが、確かに近所の動物園に出かけるといったありきたりの勉強をするよりは、はるかに興奮に満ち溢れていますよね。 また他にも、「2001年:宇宙の旅」の作者であるアーサー・クラーク氏も参加しています。実は、このクラーク氏は、ソーラーセイルのヒントになるような"The Wind from the Sun"という短編を書いています。そんなクラーク氏は、DNAとともに手紙の中に"Fare Well, My Clone!(私の分身よ、元気でやってくれ。)"ということを書いています。 人類が滅んでしまったあとでも、優れた文明をもった生命が、このソーラー・セイルを見つけ、そのDNAから私たちのクローンを作り出すかもしれないと考えるならば、これほど魅力的なプロジェクトもありません。人それぞれによって考えることは違いますが、多くの人は夢を買うつもりでこのプロジェクトに参加しているのでしょう。 宇宙でのビジネス 宇宙事業に民間企業が参入して、それがビジネスとして成り立っていくということは、今までで誰もあまり本気で考えてきませんでした。実際、このプロジェクトも、一般の人の参加費だけで、かかった費用を回収することは難しいのでしょう。実際は個人の投資家などから費用を回収しています。 けれど、特にこのソーラーセイルを使ったプロジェクトに関しては、他にもさまざまな民間企業や組織が計画しています。その理由には、このソーラーセイルが、NASAが打ち上げているようなスペースシャトルと比べれば、はるかにコストをおさえることができるというのがあります。 いずれにせよ、NASAなど国営のプロジェクトだけでは、このEncounter2001のようなユニークなプロジェクトは行うことはできません。民間企業の参入で、宇宙資源の獲得競争が始まるといった抵抗感などもあるでしょうが、それだけではなくて、今回のようなエンターテイメントを重視した民間のプロジェクトも今後多く立ち上げられていくのでしょう。例えば、月と地球の間をソーラーセイルでレースをするといったことも考えられているようです。 なお、今後このように民間企業が宇宙事業に多く参入してくるようになるためには、NASAのような国営のプロジェクトと民間企業の役割のはっきりとした区別が必要になってくるのでしょう。その点ではますますNASAなどの役割が重要になってくるといえます。 おそらくは、火星の有人探査など危険を伴うプロジェクトなどは、国営のプロジェクトが行って、それが民間企業でも可能になれば、民間企業がエンターテイメント性を持たせて市場を開いていくという形になるのでしょう。 なにかとNASAなどの国営プロジェクトは、予算配分などの面で、計画通りにミッションが実行できないといった問題が生じているのですが、NASAのミッションのおかげで、そこに民間企業が新しい市場を開いていくことが出来るようになるのならば、国営プロジェクトに予算を多く盛り込むことにも価値が増してくるといえるでしょう。 関連コラム 「宇宙を帆船で旅しよう」 ソーラーセイルの技術的な仕組みや、実際に一番初めに行われるプロジェクトなどについて。ちなみに今回紹介した記事のソーラーセイルの形はまさに凧の形ですが、こちらの記事で紹介しているのはもう少し細かい操作の出来る花のような形をしています。 関連サイト ●Encounter2001のホームページ(英語) ・ミッションの詳細 ・ミッションのイメージムービー(リアルプレイヤー) http://www.encounter2001.com/video/3d.rm http://www.encounter2001.com/video/aeroastro.rm http://www.encounter2001.com/video/solarsail.rm ・参加者の書いたメッセージの一例 ・クラーク氏のメッセージ それにしても、参加者のメッセージを見ているといろいろあって結構面白い。中には日本の人のものもありましたよ。ちなみに2001なのに、実際の打ち上げは2003年。なかなか予定通りに行かないこともあります(^^)。 ●Uchunet.com 上のEncounter2001の日本のパートナーのようです。上のサイトの内容をだいたい日本語で網羅しています。それにしてもこの会社(?)、どういう組織なんだろう? ●スペース・ベンチャー、その未来と勝算は? - MSNジャーナル もともとはNewScientistという科学誌の記事。宇宙事業のベンチャーであるスペース・デブ社の会長とのインタビュー。 関連ニュース(英語) ・Arthur C. Clarke's Hair Space-Bound - Discovery Channel ・Team Encounter Mission Specifications - Space.com ・Houston company wants to sail DNA into space - CNN |
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