■レーザー
- 半導体レーザー
半導体レーザーは他のタイプのレーザーと比べて小型、高効率、低電圧、低消費電力、長寿命などの性質をもっており、光エレクトロニクス分野で幅広く使われている。半導体レーザーは「ダイオードレーザー」と呼ばれることもあり、発光ダイオード(LED)がその基礎となっている。そのため発光のメカニズムはLEDと同じである。詳しくは「発光ダイオード(LED)」を参考。
そこでこのページでは、前のページで挙げたレーザーの条件、反転分布とレーザー発振に焦点を合わせて見てみることにしよう。
半導体レーザーは「反転分布」をどう可能にする?
誘導放射が起こりやすくするために、エネルギーの低い価電子帯の電子の数に対して、エネルギーの高い伝導帯にある電子の割合が大きい状態を反転分布と呼ぶことはこれまでに述べたとおりだ。
ルビーレーザーの場合は、反転分布を可能にするために、キセノンランプを使っていた。しかし、半導体レーザーではこのような方法は使わずに、ある方法で伝導帯に電子を注入する。大型で消費電力の大きいキセノンランプなどを使わないことが、半導体レーザーの小型、低消費電力を可能にする理由でもある。
半導体レーザーにも様々なタイプがあるが、一般的に使われているのはダブルへテロ接合と呼ばれる構造のものである(ダブルへテロ接合、その他の接合については、「発光ダイオード(LED)」を参考)。

ダブルへテロ接合の構造とエネルギーバンド図。 |
ダブルへテロ接合は図のようなサンドイッチ構造になっている。バンドギャップの大きいP型とN型のクラッド層(被覆層)で、バンドギャップの小さい活性層を挟んだかたちとなっている。クラッド層に設けられた外部電極から順方向に電圧をかけると、P型クラッド層から活性層に正孔が、N型クラッド層から活性層に電子が注入される。したがって、活性層は反転分布の状態にある。ここでは、効率よく誘導放射が起こる。
半導体レーザーのレーザー発振
発光ダイオードと半導体レーザーの最大の違いは、このレーザー発振があるかないかにある。ルビーレーザーは合わせ鏡の構造になっていたが、半導体レーザーの場合も合わせ鏡の構造になっている。

ダブルへテロ接合レーザーの構造。CDなどに使われる最も一般的な半導体レーザー。 |
図にあるように、活性層の両側面は屈折率の違いから反射鏡になっている(へき開面)。また、活性層とクラッド層との間でも屈折率の違いに全反射し、クラッド層に光が漏れにくい。この二つの点から光は活性層に閉じ込められ、誘導放射を繰り返すうちに光が増幅されレーザー光として外部に放出される。こうして反射ループが平衡状態に達するとレーザーが連続発振に達する。
半導体レーザーの主な用途と材料・特徴
小型・低消費電力の半導体レーザーは、特に通信用の技術として成長してきた。しかし、最近ではCDやDVD、さらには次世代ディスクなどストレージへの利用の重要性も高まってきている。下に半導体レーザーの主な用途などをまとめておく。
主な用途 |
レーザー波長・化合物半導体の材料 |
通信用 |
基幹系 |
λ=1550nm |
In0.58Ga0.42As0.9 P0.1 |
λ=1330nm |
In0.73Ga0.27As0.58 P0.42 |
InGaAsP系(1100-1600nm) |
※化合物半導体レーザーでは、例えばInGaAsP系(In1-xGaxAsyP1-y)のように、活性層の元素組成比(x,y)を変えることで、レーザーの発振波長をある範囲でかえることができる。 |
アクセス系 |
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ストレージ用 |
CD、プリンタ、... |
λ=780nm |
GaAlAs系(750-850nm) |
λ=650
/635nm
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GaAlInP系(620-680nm) |
λ=405nm
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GaN系(紫青緑) |
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DVD、バーコードリーダー、... |
次世代ディスク(Blu-ray Disc) |
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