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図解でわかる電子回路―トランジスタ、コンデンサから論理・演算回路のしくみまで
/日本実業出版社



 

  
イントロダクション
トランジスタ誕生から集積回路への利用
トランジスタを理解するための前知識
MOS FETの仕組み
バイポーラトランジスタの仕組み
CMOSの仕組み
リンク集

 
トランジスタ
 − CMOSの仕組み

 海辺のリゾート地では、観光客を急な崖に昇らせたり降ろさせたりするためのケーブルカーをよく見かける。このケーブルカーはたいていの場合、昇りと降りで二台一組となってケーブルにつながれている。別々に運転するよりもエネルギー効率がよいために、このような設計がされている。PチャンネルMOS型とNチャンネルMOS型の二つを同一基板上に配置したCMOS型も、このケーブルカーと同じような発想から生まれている。

PMOS型,NMOS型

 「MOS FETの仕組み」で紹介したPチャンネルMOS型トランジスタ、NチャンネルMOS型トランジスタでは、作りやすさの点からPMOS型の方が先に実用化されていた。NMOS型の実用化には、ゲート部分のシリコン-酸化膜界面の物理的・電気的安定性の問題があったためだ。しかし、PMOS型が主流だった当時から、電子をキャリアとするNMOS型のほうが性能がよいことがわかっていた。そこでNMOS技術的な課題をクリアした後は、NMOS型の方が多用されるようになった。


nMOS,pMOSトランジスタの記号


 こうしてPMOS型、NMOS型の両方が揃うと、この二つを同一基板上に配置して、それらを組み合わせて回路を構成する「
CMOS型」(「シーモス」と読む、C:Complementary,「相補的」といった意味)が登場した。その構造や動作原理については下で述べるが、エネルギー効率がよく、小型化に有利で、現在の集積回路では欠かすことのできない存在となっている。


CMOS型

・構造

CMOSの構造(断面図)
 CMOSでは同一シリコン基板上にPMOSとNMOSのトランジスタを作らなくてはいけないため、「ウェル(well,井戸)と呼ばれる比較的深い領域(PまたはN型の導電領域)が必要となる。ウェルにはいろいろな種類があり、目的によって使い分けられているが、左の図に示したのは最も一般的なP型シリコン基板を使ったものである。P型シリコン基板のものにも、ウェルの数に応じて、シングルウェル、ツインウェル、トリプルウェルなどがある。


・動作原理

cMOS回路
 左にCMOS回路の図を示している。nMOSとpMOSには、同じ入力電圧Viが入力されている。nMOSとpMOSでは同じ入力電圧に対しスイッチの動作は逆になるので、pMOS型トランジスタQpがONのときは、nMOS型トランジスタQnはOFFとなる。逆に、QpがOFFのときはQnはONとしてはたらく。

 入力電圧がOFF、つまりQpがONのときには、出力電圧Vo=Vddで出力はONとなる。逆に入力電圧がON、つまりQpがOFFのときは、Voは0となり、出力はOFFとなる。これから分かるように、CMOSはNOT回路インバーター、0→1、1→0)として機能している。集積回路では様々な理論ゲートが使われているが、NOT回路が最も基本になっている。

 QnがONのときにはSpは必ずOFFとなっているので、Vddから電流は流れず、電力を消費することもない。これはCMOSの重要な性質で、消費電力が小さいことにつながる。大規模な集積回路には、数百万個もの小さなトランジスタが埋め込まれているため、消費電力が大きくなるばかりではなく、回路の発熱も大きなものとなる。さらにこの熱はデジタル回路の誤作動を引き起こすことにもつながってしまう。そのためからCMOSは集積回路の構成に適しているといえる。


バイポーラトランジスタの仕組み リンク集