基本数値 |
直径
0.4nm〜 |
グラフェンシートを丸めて円柱をつくるとき、チューブの直径は約0.4nm以上という制約がある。それは、フラーレンキャップがC20の半球となるようにするためである。最小直径以上なら、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のサイズに制約はないはずだが、一般的には、SWCNTの直径分布は0.8-1.4nm付近に集中していることがラマン分光法などからわかっている。 |
密度
1.33〜1.40g/cm2 |
アルミニウムの密度が2.7g/cm2なので、CNTの機械的強度を考慮すると、CNTはかなり理想的な素材といえる。 |
機械的強度 |
引っ張り強度
数十GPa |
CNTの引っ張り強度は、高力鋼合金で2GPa程度ということを考えると、非常に強いことがわかる。また、どんどん引っ張っていっても破断せずに、ネッキングを起こして最後は一炭素原子列になって両端がつながっている状態になるという理論予測がなされている。 |
弾性限界
(破断せずに曲がり、また復元する) |
カーボンファイバーや金属は曲げ応力を加えると、弾性限界を超えたところで破断するのに対し、CNTは圧縮側にうねり構造をとりながら変形していくことが透過電子顕微鏡(TEM)などで観察されている。また変形しても復元することが分かっている。したがって、CNTは破断しにくく、柔軟性に富んでいることが分かる。 |
熱的性質 |
熱伝導性
6000W/m・K(室温) |
熱伝導性はグラフェンシート同様に高い値を有すると考えられているが、グラファイトが上下のシート間でフォノン伝搬の影響を受けるのに対し、CNTは個々で独立にフォノン伝搬が発生するために、相当高い値が期待されている。コスト面などの問題もあるが、宇宙航空分野での利用などには大いに期待できる。 |
耐熱性
2800℃(真空中)
750℃(空気中) |
化学的性質 |
反応性
一般に低い |
グラフェンシートに欠陥がない場合、CNTの側面は六員環だけからなり、グラファイト表面がそうであるように化学的な反応性は低い。両端のキャップ部分にはやや不安定な五員環も含まれているが、全体の六員環の数を考えれば、五員環の影響は無視できるほど小さい。仮にSWCNTを化学修飾する場合は、両端部分で行うのが一般的と考えられる。 |
可溶性
基本的にない
特殊な操作で可溶化することも |
フラーレンは有機溶媒に溶け、さまざまな分光学的研究が行われてきたが、CNTの溶解度は著しく低い。しかし、CNTを細かく切断して、末端を化学修飾することで、可溶性を示すということが最近報告され始めている。 |
その他の物理的性質 |
電界放出(多層) |
CNTはシリコンやモリブデンのマイクロティップに比べて、真空の制約が緩い、アスペクト比が高いことから電流密度が高い、電流輸送量が大きいため丈夫といった特徴がある。技術的な課題があるものの、現在存在しているどの材料よりも、CNTは電界放出源として向いていると思われる。 |
水素吸蔵 |
97年のNRELのグループによる理論予測により、SWCNTの水素吸蔵が10重量%にも至ると報告されたのをきっかけに、CNTの水素吸蔵タンクへの研究開発が始まった。ちなみにこの値は水素吸蔵合金の5倍近くである。しかも、炭素ゆえに軽量である。ただし、他の理論予測や実験により、吸蔵量の値がまちまちであり、今すぐ吸蔵タンクに実用化できる段階にはない。
M.J.Heben et al, Nature, 386, 377 (1997) |
超伝導性 |
CNTが約1K以下で超伝導を示すことが確認されている。
A Yu Kasumov et al. 1999 Science 284 1508 |