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有機ELのはなし
/日刊工業新聞社



よくわかる有機ELディスプレイ―携帯電話からテレビまで 有機ELが拓く新ディスプレイ時代
/電波新聞社


有機ELのすべて
/日本実業出版社

テクノタイムズ社


有機ELディスプレイ技術(月刊ディスプレイ増刊01/12)
/テクノタイムズ社



 

  
イントロダクション
有機ELの基礎
発光のメカニズム
量子効率について
パッシブマトリクス・アクティブマトリクス
フルカラーの実現
今後の課題と展望/リンク集

 
有機ELディスプレイ
 − 今後の課題と展望/リンク集


 現時点のポストCRT競争では、液晶ディスプレイが頭一つ(それ以上)抜き出ている感じだが、将来的には有機ELディスプレイの方が有望のように思われる。有機ELディスプレイは自発光なので、視野角の問題もなく視認性に優れている。また、フレキシブルでLCDよりも薄型化が可能だろう。

 ただ、有機ELディスプレイの夢を語ることは簡単だが、LCDとシェアが反転するのは、まだ当分先のことと思ってよさそうだ。まだ有機ELディスプレイには課題が山済みで、上に挙げたような利点を生かしきれていないのが実情なのだ。このページでは、現時点での有機ELディスプレイが抱えているいくつかの課題を取り上げよう。



寿命の問題

 有機ELが抱えている大きな問題の一つにこの寿命の問題がある。たいていの有機分子が酸素や湿気に弱い。そのため、外部から遮断する技術を高めていくことで、これまで寿命をのばしてきた。

 しかし究極的には、不安定な有機分子を厳重に外部から遮断するというのではなく、安定な有機分子から有機ELディスプレイを構成することが期待されている。その候補として考えられているのがりん光による発光を使った有機分子だ。りん光を利用した有機ELは、高い内部量子効率を期待できるだけでなく、長寿命も期待できると考えられている。

 有機分子は基底状態よりも励起状態にあるときに酸素や水分と反応して劣化する確率が高い。そのため劣化を防ぐためには、励起状態にある時間を短くしてやればよい。

 一般には三重項励起子にある時間は1msから1秒ほどで有機分子を劣化させる可能性が高いが、りん光発光材料をドーピングしてやると、その時間を100nsから100μsにまで減らすことができる(詳しくは「内部量子効率について/蛍光・りん光」を参照)。これにより劣化する可能性をずいぶん下げることができ、したがって長寿命な有機ELディスプレイが可能になると考えられている。



製造方法

 現在採用されている有機ELの製造プロセスはほとんどがLCDのために発展してきたものである。そのため製造基盤はある程度整っているといえるが、LCDで採用されている製造プロセスはどれもコストのかかるものばかりである。特にLCDに使われているガラス基板は製造に手間がかかり、価格を吊り上げる大きな要因となっているが、このガラス基板をプラスチックシートでおきかえることができれば、それだけでコストパフォーマンスの向上がはかれる。

 またプラスチックシートを用いることがでれば、ローラーとローラーの間を通していくという低コストな印刷プロセスで製造が可能になるだろう。

 しかし、酸素や湿気に敏感な有機分子を外部から完全に遮断できるプラスチックシートは、現時点では見つかっていないのが現状だ。そのため、製造プロセスはLCDの場合とほとんど同じで、有機ELディスプレイのコスト面での利点は生かせていない。




 いくつか課題を挙げてみたものの、最近のR&Dの研究開発の進み具合はすさまじいものがあり、この課題もいずれ近いうちに克服されてしまうかもしれない。例えば、高輝度の赤色発光体が得られないということが、1、2年前までの課題とされていたが、今ではかなり改善され、あまり話題にならなくなってしまっている。LCDに対して完全に優位に立つにはまだしばらくかかりそうだが、2002年内に有機ELディスプレイを使った携帯電話などの販売が予定されているなど、商品として市場に出回り始める時期はそう遠くないだろう。





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