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ナノテクノロジーの最前線 アトムテクノロジーへの挑戦〈2〉電子スピンを見る操る
/日経BP


Semiconductor Spintronics and Quantum Computation
/Springer-Verlag



    最終更新日:2002/11/10
 

  
イントロダクション
スピンとは?
ハードディスクの成長を支えたGMR素子
メモリに必要な条件をすべて満たす MRAM
スピンFET 広がるスピントロニクス
リンク集

 
■スピントロニクス
 - ハードディスクの成長を支えたGMR素子

ハードディスクとGMRヘッド
 半導体業界では右肩上がりの成長を示す法則のようなものがいくつか存在している。もちろんハードディスクの場合も例外ではなくて、90年代前半は年率約50%の割合で情報密度が高まっていくということが知られていた。ところがあるブレイクスルーがきっかけとなって、ここ数年はハードディスクの高密度化が加速する傾向にある。
 図.HDDの情報密度の推移 - IBM

 そのブレイクスルーとは1997年にIBMが導入した「GMRヘッド(巨大磁気抵抗、Giant ManetoResistance)」だ。これのおかげで、私たちのパソコンのディスク容量は有り余るほどになったし、IBMのマイクロドライブはCF(Compact Flash)カードと同じサイズながら1GBという大容量が可能となった。実は、このGMRヘッドはスピントロニクスのもっとも先駆け的な存在といえる。
 IBM 1GBマイクロドライブ - IBM

 では、このGMRヘッドとはいったいどういう素子なのだろうか?ここでは磁気記録装置に大きな飛躍をもたらしたGMR素子について見てみることにしよう。


GMR効果とは?
 GMR素子の基礎となっているのは、1988年にフェルト(A.Fert)らによって発見されたGMR効果というものである。それまでは、素子の磁気構造はその電気伝導性にあまり大きな影響を与えないというのがエレクトロニクスでの共通の認識であったが、この現象の発見によってその認識は覆されることになった。

 GMR効果は、下のアニメーションのように二つの強磁性体層で非磁性体層をはさんだサンドイッチ構造の素子で観測される現象だ。二つの強磁性体の磁化の方向が平行か反平行かで、素子の電気伝導性が変化するというものだ。

GMR効果について

 アニメーションでも説明しているように、これは磁性体内の電子スピンが作り出すマクロな現象である。したがって、このGMR素子はマクロ的な視点から、電子スピンの特性を制御していることになる。


GMRヘッドを採用したハードディスク

 GMRヘッドの構造とその動作原理を下にアニメーションで示す。

HDDとGMRヘッドの構造・動作原理
 
 このようにGMRヘッドは、今ではもっとも最初に成功したスピンデバイスと見なされるようになった。




スピンとは? メモリに必要な条件をすべて満たす MRAM