■スピントロニクス
− イントロダクション
ほとんどの場合、これまでのエレクトロニクスは電子の電荷に基礎をおいていた。つまり「+(もしくは帯電せず)/-」を「0/1」に対応させて情報処理を行っていた。しかし電子にはもう一つ重要な性質、スピンが存在している。やはりスピンにも、「アップ/ダウン」というように二つの状態があるのだが、近年、電子スピンをエレクトロニクスに積極的に取り入れようとする試みが強まってきた。このような新しい分野を、「スピントロニクス(spintronics, spin+electronics)」などと呼んでいる。
スピンエレクトロニクスとは、「0/1」を表現するのを、単に「+/-」から「アップ/ダウン」に変更するだけではない。スピンの特性をいかして、電荷に基づいた従来のエレクトロニクスでは不可能だったようなデバイスも実現できるようになる。これまでに成功したスピンデバイスにはGMR素子などがあるが、これはハードディスクの記憶容量を飛躍的に増大させた。また、数年後には不揮発性の高速メモリ「MRAM」も実用化されると期待されている。
スピントロニクスの可能性ばかりを挙げればきりがないが、実際のところスピンという概念は意外と分かりにくいものだ。そこで、今回はスピンがどんなものかということから始めて、GMR素子、MRAM、スピントランジスタといったスピントロニクスの応用例を見ていくことにしよう。
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