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はじめてのナノプローブ技術
/工業調査会


走査型プローブ顕微鏡―基礎と未来予測
/丸善


ナノ・フォトニクス―近接場光で光技術のデッドロックを乗り越える
/米田出版


ナノテクノロジーの最前線 アトムテクノロジーへの挑戦〈1〉ナノテクで原子分子を見る触る操る
/日経BP社



 

  
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歴史
走査トンネル顕微鏡,STM
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SPMによる観察・評価
SPMによる微細加工
リンク集

 
■走査プローブ顕微鏡,SPM(Scanning Probe Microscope)
 - 走査トンネル顕微鏡、STM


STMの全体の動作原理


動作原理

 いくつかの動作モードがあるが、その基本は前のページで紹介した「
トンネル電流」の検出である。試料に対してプローブ(探針)を二次元面内に走査した場合を考えてみよう。

 そのときに、トンネル電流が一定になるように設定されていれば、プローブは試料表面の凹凸に合わせて一定の距離を保とうとするので上下する。この上下運動を感知すれば、試料表面の状態を知ることができる。(上のFlashアニメーションはこのタイプの動作モードである。)なお、プローブと試料表面との距離は数nm程度である。

 または、プローブを試料表面から一定の距離を離しておけば、表面の凹凸により、トンネル電流の大きさが変化する。このトンネル電流の値から試料表面までの距離を知ることができる。

 こうして、いずれの方法でも試料のトポグラフに対応した情報を得ることができる。 



それぞれのパーツについて

・プローブ

   前のページでも述べたように、極端な話、タングステン(W)の針金をニッパで斜めに切り、簡単な化学処理を施してやるだけでも、プローブとして利用すことはできる。しかしこのようなプローブでは、取り替えるたびに分解能が変化したり、まったく異なった画像が現れたりすることがある。なぜなら、このようなプローブでは、真にはプローブの先端の条件が一定でなく、再現性がないためだ。また、薄膜表面を走査するだけならよいが、表面に深い溝がある時はプローブのサイズが問題となって、奥まで調べることができない。

  理想的には、先端が原子1個分までとがったプローブが望ましいが、電解研磨や機械研磨、電子ビーム加工などのトップダウンの加工で実現するのは難しいし、コストもかかる。そこで、アスペクト比の大きいカーボンナノチューブがプローブとして一部で利用されている。

・圧電素子

  一定のトンネル電流が流れるようにプローブと試料の間のギャップを一定に保つ場合、プローブを上下させる仕組みが必要となってくる。その役割を果たしているのが圧電(ピエゾ)素子である。プローブの上下運動はz軸の圧電素子が行っている。

・ノイズ除去

  STMの概念はBinning,Rohrer以前にもあったが、実現できなかったのは、圧電素子などの制御やノイズの除去にあった。電子顕微鏡の場合も振動の除去が必須の条件となるが、STMの場合は直接倍率が電子顕微鏡よりも高いために、より完璧な振動除去が必要となる。そのため、二重吊りばねや金属とゴムを何層にも重ねた土台、もしくはそれらを組み合わせたものなどが使われている。



今後の課題・展望

  STMはトンネル電流を検出するという性格から、試料が電気を通すものでなければならず、調べることのできる試料が限られる。あとで紹介する原子間力顕微鏡(AFM)は、このような制約を受けない。また、AFMの分解能はSTM並かそれ以上とされている。

  また、STMは原子レベルでの観察が可能だが、その元素の同定はできない。そこで、STMと分光学的な装置を組み合わせることで、一つ一つの元素の同定が可能になるように研究開発が行われているところである。



歴史 原子間力顕微鏡,AFM