■トランジスタ
- 電界効果トランジスタ、FET( Effect
Transistor)の仕組み
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FETの仕組みは図にあるように水門の構造とアナロジーが成り立っている。水源のタンクにはタンク内の水面値を制御する球状のセンサがあり、排水路のタンクには余分な水を溢れ出させるためのパイプがある。水門は水源から排水路に水が流れるのをおさえている。ただし、水源のセンサが作動すると水門は押し下げられ、水源から排水路に水が通されることになる。水門のON,OFFによって水の流れが制御される。これはあとで見るように、FETの原理と似ていることが分かる。 |
トランジスタには主に「電界効果トランジスタ(FET; Effect Transistor)」と「バイポーラトランジスタ(bipolar transistor)の二つのタイプがある。ほとんどのトランジスタはFETかバイポーラトランジスタに属し、両者ともいろいろな点で優劣がある。例えば、バイポーラは出力パワーが大きく出力の歪みも小さいため、ハイファイシステムなどに利用されている。一方、FETは小型化が可能で集積回路に詰め込みやすいなど、コンピュータの分野に優れている。そこでここでは、FETを中心に見ることにし、バイポーラトランジスタは簡単に紹介するだけにとどめよう。
まずは、FETのほうを見てみる。
・FETはどんな構成をしている?
上の挿絵の紹介にあるように、FETは水門によく似た働きをする。そのことは、下図のFETを構成する三つのパートがソース(水源)、ゲート(水門)、ドレイン(排水路)と名づけられていることからもよくわかる。
MOSFETの基本要素を示したもの。これはNPN型(Nチャンネル)。集積回路で使われているプレーナー型で、ウエハ面に収まった構造になっている。 |
上図にあるように、FETは三つのパートからなっている。この図の場合、二つのn型半導体の間にp型半導体がサンドイッチされた構造になっている。半導体にシリコンが使われている場合は、ホウ素をドープすることでp型半導体に、リンをドープすることでn型半導体になる。(詳しくは「半導体」を参考に。)
またゲートの部分に注目すると、金属(Metal)、酸化物(絶縁体)(Oxide)、半導体(Semiconductor)となっていることから、その三つの要素の名前をとってMOS FETと呼んでいる。酸化物(O)については、p型半導体にシリコンを使っていれば酸化させてやることで、酸化物と同時に絶縁体のSiO2層をつくることができる。また金属にはアルミニウムやポリシリコンなどが使われている。FETには三つの電極があるが、中央のゲート電極が重要な水門の役割を果たす。
・ゲート電極がオフの状態
まず、ゲート電極に電圧をかけないで、両端の電極だけに電圧をかけた場合にどうなるだろうか?この場合、npnの接合面のうちどちらかは逆バイアスの状態になっているはずだ。前のページでも見たように、逆バイアスの場合、トランジスタに電流は流れない。これがトランジスタのオフの状態だ。
ゲート電極がOFFの状態。二つあるpn接合面のうち、一方は逆バイアスなので、電流は流れない。 |
・ゲート電極がオンの状態
一方、ゲート電極に正の電極をかけたらどうなるだろうか?
まず、ゲート電極の正の電荷がp型層の上面にある正孔をはねのけて奥の方へ追いやってしまう。また、p型層の少数の伝導電子(少数キャリア)はゲート電極の正の電荷に引き寄せられて、上面に集まってくる。ただし絶縁層を通りぬけることはできない。こうしてp型層の上面にn型のチャンネル(水路)ができあがる。これは反転層と呼ばれている。この層ができあがることによって電子は逆バイアスのpn接合を通ることなく、ソースからゲートへと移動することができる。こうしてトランジスタを電流が流れる。
ゲート電極を正に印荷した場合。 チャンネルが形成され、電流が流れる。
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今まで話してきたのはチャンネルがn型なのでNMOS型と呼ばれているが、チャンネルがp型でPMOS型と呼ばれるものもある。PMOS型では正孔がキャリアになっている。また、ゲート電圧や電流の向きが逆になることにも注意する必要がある。
Pチャンネル、Nチャンネルのどちらの構造でもMOS
FETをつくることは可能だが、一般にNチャンネルの方が性能がよい。なぜなら、電子のほうが正孔よりも有効質量が小さいためキャリアとしてすばやく動くことが可能だからである。
また、このPMOS型とNMOS型の二つを同一基板上に配置したCMOS(complementary,相補)型というものがある。小型化に優れ、集積回路には欠かせないデバイスである。
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