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Semiconducting Polymers: Chemistry, Physics, and Engineering
/John Wiely & Sons


高分子エレクトロニクス―導電性高分子とその電子光機能素子化
/ コロナ社


導電性高分子のはなし
/ 日本工業新聞社



 

  
イントロダクション
導電性は何に由来する?
キャリア移動度-π共役構造
キャリア濃度-ドーピングでキャリアを注入
応用例1;バックアップ電池、機能性コンデンサ
応用例2;有機EL、高分子LED
応用例3;有機トランジスタ、プリンタブル回路

リンク集

 
導電性高分子
 − キャリア移動度-π共役構造

 キャリア移動度、つまり電気の流れを担う電子や正孔が動きやすいほど、その高分子の導電率は大きいわけだが、いったいどのような構造がキャリアの動きやすさを左右するのだろう?

 それは高分子の直鎖に「
共役二重結合」があることが重要となる。共役系の分子というのは、ポリアセチレンのように炭素の単結合と二重結合が順番に繰り返している構造をもつ分子のことだ。


図で炭素原子と炭素原子を直接結んでいるのがσ結合、オレンジのπ軌道どうしを結んでいるのがπ結合。図では、炭素原子館にπ結合が2つあるように見えるかもしれないが、π結合は炭素原子館に一つだけ存在している。


 例えば、ポリアセチレンのall-trans型の構造を見てみよう。ポリアセチレンの炭素原子はとなりの炭素原子と二重結合をつくっているが、そのうち一つは「σ結合」というエネルギー的に安定した強い結合で、もう一つは「π結合」という比較的弱い結合によって構成されている。そのためπ結合上の電子は動きやすい(非局在化)という性質をもっている。この導電率σは10-5(S/m)で、半導体の領域に含まれる。

 ところがポリエチレンの場合は、直鎖がσ結合だけからで構成されていてπ結合を含まず、キャリア移動度は小さい。そのため導電率σは10-17(S/m)と絶縁体の領域に含まれる。ポリアセチレンとポリエチレンの導電率の違いは極端であることが分かる。

 ただし、all-trans型のポリアセチレンには、キャリアの通り道は存在しているが、肝心のキャリアが存在していないのだ。それは、すべての電子が結合に使われてしまって、自由に動けるあまりの電子がほとんど存在していないからだ。キャリアがいなければ電気は流れない。トランス型ポリアセチレンも純粋なままではほとんど電気を通さないのだ。そこである仕掛けをすることによって、ポリアセチレンのキャリアの数を増やし、導電率を大きく上昇させることができる。その仕掛けというのが次のページで取り上げる「
ドーピング」なのである。



導電性は何に由来する? キャリア濃度-ドーピングでキャリアを注入